数ヶ月前、猫嫌いだったはずの私の実家に、一匹の野良猫がふらりと現れました。母は最初、「うちには猫なんて飼えない」と繰り返し言っていましたが、冷え込む夜にその猫の姿を見つけると、つい手を伸ばしてカリカリを与えました。「一度だけよ」と言い聞かせるように。しかし、それが始まりでした。その猫は次第に安心しきった態度を見せ、なんと子猫たちを連れてくるようになりました。母は「絶対に飼わないから」と言いながらも、朝晩、猫缶を用意するようになり、日中は庭先で猫たちが気持ちよさそうに日向ぼっこをするのが日常に。いつの間にか、家族全員がその猫一家に心を掴まれていたのです。「猫は嫌いだったはずなのにね」と母が笑いながら言う日、父は一言呟きました。「でも、今うちには猫しかいないな」。猫嫌いのはずの我が家が、まさにこうして猫に籠絡されたのでした。