夕暮れ時、私が住むアパートの向かいにある一軒家。その玄関先には、いつも白くて美しい猫が佇んでいました。飼い主の奥さんが買い物から戻ると、その猫は待っていたかのように嬉しそうに出迎える姿が見え、「なんて可愛らしい猫なんだろう」と、心が温まる瞬間を度々目撃していたのです。ある日、ゴミ出しの際に奥さんと話す機会がありました。「真っ白で綺麗な猫ですね。首輪も可愛いですし、本当に素敵です」と話しかけると、奥さんは突然涙を浮かべました。そしてこう語り始めたのです。「その子は、もう三年前に亡くなったんです」。驚きで声を失った私に、奥さんは続けました。「あの子は私が大切にしていた子で、ある日階段から落ちてしまって…。それ以来、今でも私を見守ってくれているのかもしれません」と。奥さんが外出するときに現れ、帰宅を迎えるように待つ猫の姿――それは、確かにあの白い猫だったのです。猫の愛情深さと思い出が、そこに居続ける理由なのかもしれないと感じたその瞬間、胸が熱くなりました。亡くなってもなお、飼い主を想い続ける猫の姿に、私は心を打たれずにはいられませんでした。