面接に行ったとある会社は、少し変わった雰囲気を持つ職場だった。到着した瞬間、事務所の扉を開けると、一匹の猫がゆっくりとこちらに近づいてきた。その猫は社員たちにとっても馴染み深い存在らしかったが、普段は誰の膝にも乗らないと聞かされた。にもかかわらず、彼女は迷いなく私の膝を選んだ。私が緊張しながら椅子に座ると、まるで「ここがいい」とでも言わんばかりに当たり前のように膝の上に転がり込んできたのだ。面接が進む中、猫は微動だにせず、ただ私の膝で心地よさそうにくつろいでいた。それが逆に場の空気を和らげたのか、社長や専務も笑顔を浮かべながら、「珍しいな、この猫がここまで懐くのは」と感心していた。話を聞けば、その猫は普段、人によって態度を大きく変えるらしい。特に苦手な人には決して近寄らないという徹底ぶり。そんな猫が私を選んでくれたことは、何か特別な縁を感じずにはいられなかった。そして面接の最後、椅子から立ち上がり猫をそっと膝から下ろそうとした瞬間、社長がこう言った。「この猫が気に入った人なら、私たちも採用する価値があるね。」肩の力が一気に抜けた私は、猫がくれた小さな奇跡に感謝の気持ちを抱いた。