彼氏が家に来ると聞いて、私は少し緊張していた。特に心配だったのは、人見知りの激しい我が家の猫たちだ。普段なら知らない人が来ただけで押し入れに隠れてしまうのだが、まさか、こんな展開になるとは思ってもいなかった。
玄関を開けると、彼が「はじめまして」と挨拶をするなり、猫たちは猛ダッシュで彼の足元に駆け寄った。普通ならここで逃げ腰になるはずなのに、なぜか彼へ全力で甘えモードに突入。一匹は足元にスリスリしながらそのままズボンをよじ登り、気づけば彼の太ももにガッチリしがみついて「大好きホールド」。もう一匹は軽やかに肩へ跳び、彼の首に巻きつくような格好で盛大にゴロゴロと喉を鳴らしていた。
その異様な光景に固まった私を尻目に、彼は「こんなに懐かれるの、初めてだな」と微笑む。父が話しかけても完全無視の猫たちが、彼の一言一句に「ニャー」と的確に応答している姿は信じられないほどだった。
母は肩を震わせながら笑いをこらえ、父は渋い顔をしながらも「伝説の背負いし者現る」とポツリ。まさか彼が猫たちの心をここまで掴むとは、予想外の展開に私は驚きつつも少し嬉しくなっていた。