僕はかつて飼い犬だった。でも、人間が怖かった。何を考えているのかわからないし、なぜ怒られるのかも理解できなかった。「怖いよ、やめて…」そう思っても伝えられない。ついには僕の口がガムテープでふさがれ、体も動けないようにロープで縛られた。そして、ご主人は僕を捨てた。雨に打たれ、空腹で震えながらも、誰も助けてはくれない。「人間なんて残酷な生き物だ…」そう諦めかけていた僕の前に現れたのは、優しい目をした一人の人間だった。近づいてくる彼に最初は怯えた。でも、彼は僕を抱き上げ、決してひどいことはしなかった。「大丈夫だよ」と、静かに語りかけてくれた。施設に連れて行かれた後、僕には新しい飼い主ができた。その人もまた、僕を叱ることなく、いつも笑顔で接してくれた。「お前は元気だな！」そう言って撫でてくれるたび、僕の心のどこかが温かくなるのがわかった。人間が怖い存在ではなく、僕を愛してくれる存在だと教えてくれる人だった。新しい暮らしの中で、僕はもう一度、信じてみようと思った。「こんな優しい人となら、きっと大丈夫だ…」そう、心の底から思えるようになったのだ。