吹雪の中、僕は凍えながら一人ぼっちで雪に埋もれていた。体は冷たい氷のように固まっていて、足を動かそうとしても動かない。「もうここで死んじゃうのかな……」そんな弱々しい声を上げることしかできなかった。僕はとある家で生まれたけれど、飼い主の人間にとって僕は“不要な存在”だった。ある雪の日、僕は母猫とも引き離され、知らない場所へと捨てられたのだ。意識が遠のきかけたその時、ふと何か温かいものに包まれる感覚がした。「……助かったの?」目を覚ますと、そこは知らない家の中だった。ふかふかの布で包まれた体を優しく撫でてくれる大きな手。その人間は、捨てられたこの僕を拾い上げ、命の火を灯してくれたのだ。それから僕は彼と共に暮らすことになった。日ごとに体も心も元気になり、飼い主である彼を心から信頼するようになった。けれど、ある日彼が怪我をしたとき、僕は自分が無力だと感じた。何もできないけれど、ただ彼のそばで寄り添って、その手を舐め、早く元気になりますようにと祈ることしかできなかった。幸い彼は回復し、僕に微笑みながら「ありがとう」と言葉をかけてくれた。その時、僕は彼の心の支えになれたんだと感じた。冷たい雪の中で命を失いかけた僕は、今や大切な人のそばにいられる存在になった。その暖かさは、どんな寒さにも勝るものだった。これからも、僕は彼と共に生きていく。彼が辛い思いをするとき、僕がそばで支えるのだ。それが、彼が僕に与えてくれた命への恩返しだから──。