リビングのガラス戸を見つめる柴犬の小麦。外に遊びに行きたくてたまらない彼は、執拗に戸に鼻先を押しつける。その姿を見て、飼い主のあちゃんは「少し開けてあげましょう」と小声でつぶやいた。 ガラス戸が少し開くと、外の新鮮な空気が流れ込み、小麦の目が輝いた。しかし、その瞬間、1歳の娘が泣き出した。「おー、泣いちゃったのね」とあちゃんは驚きつつ娘を抱き上げたが、泣き声は止まらない。どうやら小麦が突然の出来事に驚いたらしい。 あちゃんが娘をあやす間もなく、小麦は飼い主のもとへ駆け寄り、低く唸り声をあげた。その威嚇する様子に驚いたあちゃんは、一瞬動きを止めたが、小麦はそれに構わず戸口へと向かい、その隙に逃亡を図った。 娘の泣き声とともに、小麦の小さな冒険が始まった。庭の芝生に躍り出た小麦は、自由を満喫しつつ、しばらくの間は戻って来る気配を見せなかった。